このほど、平成23年度税制改正大綱が公表されました。
そのうち、相続税の考え方について、次のように述べられています。
また、平成22年度の税制改正にて「相続税の増税をする」と宣言されていましたが、宣言通りに実行されたことが確認できました。
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・【相続税法改正】平成22年度税制改正大綱:相続税・贈与税(2009/12/26)
① 相続税の基本的な考え方
相続税は格差是正・富の再分配の観点から、重要な税です。
相続税の基礎控除は、バブル期の地価急騰による相続財産の価格上昇に対応した負担調整を行うために引き上げられてきました。
しかしながら、その後、地価は下落を続けているにもかかわらず、基礎控除の水準は据え置かれてきました。
そのため、相続税は、亡くなられた方の数に対する課税件数の割合が4パーセント程度に低下しており、最高税率の引下げを含む税率構造の緩和も行われてきた結果、相続税の再分配機能が低下しています。
地価動向等を踏まえた基礎控除の水準調整をはじめとする課税ベースの拡大を図るとともに、税率構造について見直しを図ることにより、相続税の再分配機能を回復し、格差の固定化を防止する必要があります。
② 改革の取組み
(イ) 基礎控除及び税率構造
格差固定化の防止、相続税の再分配機能・財源調達機能の回復等の観点から、基礎控除を「3,000 万円+600 万円×法定相続人数」へ引き下げるとともに、高額の遺産取得者を中心に負担を求める観点から最高税率を55%へ引き上げるなど税率構造を見直します。
(ロ) 死亡保険金の非課税措置
死亡保険金の非課税措置については、「相続人の生活安定」という制度趣旨の徹底の必要性や他の金融商品との間の課税の中立性確保の要請等を踏まえ、算定の基礎となる法定相続人の範囲を縮減します。
(ハ) 未成年者控除・障害者控除
相続税額から一定額を差し引く未成年者控除・障害者控除については、控除額が長年にわたって据え置かれてきており、物価動向や今般の相続税の基礎控除等の見直しを踏まえ、引き上げます。
これを踏まえて、次のような改正の内容となりました。
(1)相続税の見直し
① 相続税の課税ベース及び税率構造について、次の見直しを行います。
(イ) 相続税の基礎控除
現行 |
改正案 |
|
定額控除 |
5000万円 |
3000万円 |
法定相続人比例控除 |
1000万円に法定相続人数を乗じた金額 | 600万円に法定相続人数を乗じた金額 |
(ロ) 死亡保険金に係る非課税限度
現 行
500 万円に、法定相続人の数を乗じた金額
改正案
500 万円に、法定相続人(未成年者、障害者又は相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限ります。)の数を乗じた金額
(ハ) 相続税の税率構造
現行 |
改正案 |
1000 万円以下の金額10% |
同左 |
3000 万円以下の金額15% |
同左 |
5000 万円以下の金額20% |
同左 |
1億円以下の金額30% |
同左 |
3億円以下の金額40% |
2億円以下の金額 40% |
– |
3億円以下の金額45% |
3億円超の金額50% |
6億円以下の金額50% |
– |
6億円超の金額55% |
② 未成年者控除及び障害者控除を次のとおり引き上げます。
(イ) 未成年者控除
現行 | 改正案 |
20歳までの1年につき6万円 | 20歳までの1年につき10万円 |
(ロ) 障害者控除
現行 | 改正案 |
85歳までの1年につき6万円 | 85歳までの1年につき10万円 |
(特別障害者は12万円) | (特別障害者は20万円) |
(注)上記①及び②の改正は、平成23年4月1日以後の相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用します。