このほど、国税庁より、平成21事務年度(平成21年7月~平成22年6月)までに実施した相続税の税務調査の状況が公表されました。
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平成21事務年度における相続税の調査の状況について
相続税について、平成21事務年度(平成21年7月から平成22年6月までの間)に実施した実地調査の状況をまとめましたのでお知らせします。
【調査件数及び申告漏れ等の非違があった件数】
相続税の実地調査については、平成19年中及び平成20年中に発生した相続を中心に、国税局及び税務署で収集した資料情報を基に、申告額が過少であると想定されるものや、申告義務があるにもかかわらず無申告となっていることが想定されるものなどに対して実施しました。
実地調査の件数は13,863件(前事務年度14,110件)、このうち申告漏れ等の非違があった件数は11,748件(前事務年度12,008件)で、非違割合は84.7%(前事務年度85.1%)となっています。
【申告漏れ課税価格】
申告漏れ課税価格は3,995億円(前事務年度4,095億円)で、申告漏れ1件当たりでは3,400万円(前事務年度3,410万円)となっています。
【申告漏れ相続財産の金額の内訳】
申告漏れ相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等1,319億円(前事務年度1,380億円)が最も多く、続いて有価証券809億円(前事務年度776億円)、土地631億円(前事務年度675億円)の順となっています。
【追徴税額】
追徴税額(加算税を含む。)は856億円(前事務年度931億円)で、申告漏れ1件当たりでは729万円(前事務年度775万円)となっています。
【重加算税の賦課件数等】
重加算税の賦課件数は1,970件(前事務年度2,052件)、賦課割合は16.8%(前事務年度17.1%)となっています。
【海外資産関連事案に係る調査事績】
納税者の資産運用の国際化に対応し、相続税の適正課税を実現するため、相続税調査の実施に当たっては、海外資産の把握に努めており、特に、資料情報や相続人・被相続人の居住形態等から海外資産の相続が想定される事案については、積極的に調査を実施しているほか、調査の過程において海外資産の取得が把握された場合にも、深度ある調査によりその解明に努めています。
【無申告事案に係る調査事績】
無申告事案は、申告納税制度の下で自発的に適正な申告・納税を行っている納税者の税に対する公平感を著しく損なうものですが、その存在の把握自体に困難な面もあることから、資料情報の更なる収集・活用など把握のための取組みを積極的に行い、的確な課税処理に努めています。
【相続税の税務調査の事例】
相続税の税務調査の事例としては、次のようなものが挙げられています。(参考:週刊税務通信3144)
(1)被相続人の預金を使った海外投資商品を相続税の申告から除外した事例
相続人Aは、被相続人の生前から被相続人の預金を使って、相続人Aの名義で海外の投資商品に投資をしていたが、相続人Aの名義であることを利用して相続税の申告から除外をしていた事例。
(2)相続後に名義変更をした預金を隠し、相続税の申告をしていなかった事例
相続人Bは、相続開始から相続税の申告期限までの間に、被相続人名義の預金を相続人Cの名義に変更していたが、相続人Bは相続税の申告が必要であることを知りながら、相続税の申告をしていなかった事例。
(3)会社から借り入れをしていると見せかけて、相続財産を減らしていた事例
会社役員である被相続人の相続税の申告状況と、被相続人が経営する会社の法人税の申告状況から、会社から被相続人に対する借入金について、相続税の税務調査を行った結果、被相続人の生前の指示により、他人の借入金を被相続人の借入金と見せかけることで、相続財産を減らしていた事例。
(4)多額の金(ゴールド)を隠し、相続税の申告から除外した事例
相続人Dは、相続財産である金(ゴールド)の一部を申告したが、残り100キログラムの金(ゴールド)を自宅に隠し、相続税の申告から除外した事例。