平成23年度の税制改正について議論が進められていますが、相続税について、生命保険金の非課税枠が縮小される見通しとなりました。
(日本経済新聞12/14) 相続税、最高55%に上げ 富裕層に負担求める 贈与税軽減、資産移転促す 死亡保険金は課税拡大
政府税制調査会が13日決めた2011年度税制改正大綱に盛り込む個人課税の見直しでは、相続税など資産課税の見直しで、2600億円超の増税を富裕層に求める内容となった。 相続税の最高税率を現行の50%から55%に引き上げ、基礎控除を4割圧縮する。 一方で、若年層への資産移転を促すため、贈与税の課税繰り延べ措置の対象を孫まで広げる。
【現在の相続税法における生命保険金の非課税枠】
現在の相続税法において、相続税の生命保険金の非課税制度は次にようになっています。
「500万円×法定相続人の数」
例えば、法定相続人が妻・子供2人の場合、生命保険金の非課税枠は1500万円となります。 法定相続人であれば、無条件で一人当たり500万円の非課税枠を使うことができ、相続税が課税されないことになっています。
【相続税の生命保険金の非課税枠の縮小】
改正案では、「法定相続人の数」に次のような基準を設けることで、生命保険金の非課税枠を縮小させるようです。
法定相続人として認められるのは、 ・未成年者である法定相続人 ・障害者である法定相続人 ・被相続人と生計を一にしていた法定相続人 ・被相続人と同居していた法定相続人 などです。
現在の相続税法では、法定相続人であれば無条件で一人当たり500万円の非課税枠を使うことができます。 しかし、この法定相続人の数に制限が設けられることで、相続税の増税につながります。
政府は300億円程度の増収を見込んでおり、子供手当などの財源に充てられることが予想されます。
【相続税の生命保険金の非課税枠を縮小する理由】
相続税について、生命保険金の非課税枠を縮小する理由としては、次の2点が挙げられます。
(1)生命保険金の非課税制度の趣旨 (2)相続税の節税に利用されている
(1)生命保険金の非課税制度の趣旨
相続税について、生命保険金の非課税枠が認められている趣旨は、「法定相続人の生活の安定」です。
未成年者や障害者など、社会的弱者については、生活の安定が重要である。 また、被相続人と生活を共にしていた方についても、生活の安定を考慮すべきである。
しかしながら、被相続人と同居をしていない成年に達している法定相続人については、制度趣旨に適さない。 というのが税制改正の理由だと考えられます。
(2)相続税の節税に利用されている
相続税の生命保険金の非課税枠について、会計検査院は次のような指摘をしています。
「高所得者による節税目的の利用も少なくない」
元々の制度趣旨は「法定相続人の生活の安定」であり、相続税の節税目的で生命保険が使われることは、制度趣旨に反する。 というのが税制改正の理由だと考えられます。
【関連ブログ】 ・【相続税法改正】相続税の最高税率は55%に引き上げへ(2010/12/14)
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