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相続時精算課税制度による生前贈与【遺産相続税相談】

  • 2010/10/12

先日、次のようなご相談がありましたのでご紹介します。
なお、家族構成などその他の内容について、実際のものに修正を加えています。

 

 

【ご相談内容】

相続時精算課税制度を利用した「生前贈与」について教えてください。
現在、父からの生前贈与を検討しています。

父の財産は、預貯金や上場株式など5000万円程度と他に自宅です。
預貯金のうち1000万円程度の生前贈与を考えております。
将来、法定相続人になるのは、母・姉・私・弟の4人です。

 

この条件で生前贈与をした場合、
(1)相続税・贈与税はどのようになるのでしょうか
(2)生前贈与を受けた預貯金で住宅ローンの返済を考えていますが、このとき贈与税はかかるのでしょうか

 

 

【ご自宅の価値が4000万円以下であれば、相続税はかかりません】

相続税には非課税枠がありますので、その非課税枠の範囲内の財産であれば、相続税はかかりません。
相続税の非課税枠は、次の算式により計算します。

相続税の非課税枠=5000万円+法定相続人の数×1000万円

ご相談者様の場合、5000万円+4(法定相続人の数)×1000万円=9000万円が相続税の非課税枠となります。

このようなことから、ご自宅の価値が4000万円以下であれば、相続税はかからないことになります。

 

 

【贈与税はかかりませんが、贈与税の申告は必要です】

相続時精算課税制度を利用した場合、2500万円までの贈与であれば、贈与税はかかりません。

ご相談者様の場合、1000万円の贈与を検討されていますので、2500万円の範囲内の贈与となります。
つまり、贈与税はかかりません。

しかし、相続時精算課税制度を利用するときは、贈与税の申告書を提出することが条件となっています。
もし、贈与税の申告書を提出しなければ、通常の計算方法で贈与税が課税されますのでご注意ください。

 

 

【住宅ローン返済のための資金を贈与すれば、贈与税の問題が出てきます】

住宅ローンの名義が生前贈与を受けたご本人の名義であれば、ご自身の預貯金から住宅ローンを返済しますので、この場合には贈与税の問題は出てきません。

しかし、住宅ローンの名義が配偶者になっている場合には、「住宅ローンを払うための現金を贈与した」として、贈与税が課税されると考えられます。

 

 

【相続税・贈与税だけでなく、遺産相続の問題の可能性も】

相続時精算課税制度を利用して生前贈与を行ったときの相続税・贈与税の問題は、上記のとおりです。
しかしながら、相続税・贈与税だけの問題だけではなく、将来の遺産相続で問題が起こる可能性がありますのでご注意ください。

相続時精算課税制度を利用して生前贈与をして、その資金をご自身の住宅ローンの返済に充ててしまった場合。
将来の遺産相続において、「特別受益」と考えられる可能性があると思います。

この場合の特別受益とは、「生計の資本としての贈与」のことです。
生計の資本としての贈与とは、「生計の基礎として役立つような財産の贈与」を言います。
具体例として、
(1)居住用不動産の贈与やその取得のための金銭の贈与
(2)営業資金の贈与
(3)借地権の贈与
などが挙げられますが、住宅ローンの返済は(1)の「居住用不動産の贈与やその取得のための金銭の贈与」に類似するものです。

将来、遺産相続が起こったときに特別受益として、相続時精算課税制度を利用して生前贈与された預貯金が遺産に戻される可能性がありますのでご注意ください。

 

 

【住宅ローンの条件変更をしてから、住宅ローンの返済も検討】

相続時精算課税制度を利用して生前贈与された預貯金を住宅ローンの返済に充てる前に、住宅ローンの条件の見直し(借り換えなど)をされてはいかがでしょうか。

1000万円などのまとまった資金を住宅ローンの繰り上げ返済に充てる理由として、
(1)ご自身が定年退職などで、今後の収入が不安定になるため
(2)子供の教育費がかかる時期でもあるので、住宅ローンの負担を減らしたい

などが考えられると思います。

特に、旧住宅金融公庫を利用されている方は、優遇期間の10年が過ぎますと大幅に金利が上昇して、金利が4%程度になることが多くなります。

住宅ローンの条件の見直しを行うことで支払総額が少なくなれば、生前贈与された資金をより有効に使えると思います。
住宅ローンの借り換えなども検討されてはいかがでしょうか。

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