先日、次のような節税についてのご相談がありましたので、ご紹介します。
【ご相談内容】
私は、マンション経営をしている者です。
マンションの修繕の時期になり、多額の修繕の資金が必要となりました。
銀行に相談すると、「借金をすれば節税になりますよ」と言われました。
修繕の備えとして毎年積み立てをしてきたので、修繕の費用を現金で一括払いをすることも可能です。
本当に、借金をすれば節税になるのでしょうか?
【長嶋の回答】
節税になるかどうかは、税金の種類によります。
・所得税→節税になります。
・相続税→考え方によっては、節税になります。
しかし、所得税の節税になることが、本当に得をするとは限りません。
【前提条件】
例えば、銀行からの借入を次の条件で実行したとします。
・借入額→1000万円
・金利→2.5%
・借入期間→10年
単純に、初年度の利息は、1000万円×2.5%=25万円となります。
また、相続財産は5億円とします。
【所得税の節税になる理由】
借入金の金利は、所得税を計算するときには、経費として認められます。
つまり、所得税の対象となる「儲け」が少なくなります。
簡単に、所得税は次の算式により計算します。
所得税=「儲け」×所得税の税率
例えば、所得税の税率が最高税率の方(住民税も含め50%)の場合、
25万円(経費となる金利)×50%(税率)=12.5万円
が、節税になります。
確かに、所得税・住民税は、節税になります。
【所得税の節税をすることが、本当に得になるのか?】
借入金の金利を経費にすることができますので、確かに所得税の節税にはなります。
しかし、所得税の節税をすることが、本当に得になるのでしょうか。
<借入金をしない場合>
借入をしないので、金利を支払う必要がありません。
つまり、得もしないですし損もしません。
<借入金をする場合>
借入金の金利25万円を支払う代わりに、所得税12.5万円が減ります。
つまり、所得税12.5万円を節税するために、現金25万円が財布から出ていくことになります。
その結果、財布から12.5万円の現金が余分に出ていくことになります。
<所得税の節税にはなりますが、現金収支が悪化します>
以上のことから、銀行から借り入れをすることで、確かに所得税の節税になります。
しかし、現金収支が悪化する結果になります。
銀行から「節税になる」とアドバイスを受けられましたが、それは正しいことです。
しかしながら、所得税を節税することが本当に「得」になるのでしょうか。
所得税の節税の効果以上に手元の現金が少なくなることが、本当に最適な方法なのでしょうか。
【借金をしただけでは、相続税の節税にはなりません】
簡単に、相続税は次の算式により、計算します。
相続税=(相続財産-借金)×相続税の税率
つまり、相続財産が少なくなれば、相続税の節税になることがわかります。
<マンションの修繕費用を借金をせず、現金で支払ったときの相続財産>
5億円(相続財産)-1000万円(マンションの修繕費用)=4億9000万円
手持ちの現金1000万円を使ってマンションの修繕を行いますので、単純に1000万円の財産が減り、相続財産は4億9000万円となります。
<マンションの修繕費用を借金したときの相続財産>
5億円(相続財産)+1000万円(銀行から借入をした現金)-1000万円(マンションの修繕費用)-1000万円(借入をした借金)=4億9000万円。
銀行から借金をすることで、現金1000万円増えますが、マンションの修繕費用として支払いますので、プラスマイナスゼロとなります。
借金は、相続財産からマイナスをして計算しますので、5億円-1000万円=4億9000万円の相続財産となります。
上記のことから、借金をしても相続税の対象となる相続財産は1円も減らないことがわかります。
つまり、借金をしても相続税の節税にはなりません。
【考え方によっては、相続税の節税になる理由とは?】
銀行から借り入れをすることで、所得税12.5万円を節税するために、現金25万円が財布から出ていくことになります。
その結果、財布から12.5万円の現金が余分に出ていくことになります。
12.5万円の現金が余分に出ていくことは、相続財産が減ることを意味します。
相続財産が減る=相続税の節税となります。
確かに、相続税の節税になりますが、この方法が本当に「得」になるのでしょうか。
所得税の節税の効果以上に手元の現金が少なくなることが、本当に最適な方法なのでしょうか。
【借金をして賃貸マンションを建設することは、本当に相続税の節税になるのか?】
上記に関連して、相続税の節税をする方法として、借金をして賃貸マンションを建設することは、一般的によく知られています。
本当に、相続税の節税になるのでしょうか。
結論から申し上げると、半分正解、半分不正解です。
賃貸マンションを建設することは、相続税の節税になります。
しかしながら、借金をしても相続税の節税にはなりません。