結婚をしていない男女の間に生まれた「非嫡出子」の遺産相続分を「嫡出子」の2分の1と定めた民法の規定が見直される可能性が出てきました。
(7/9:毎日新聞)
<非嫡出子相続格差>大法廷で憲法判断へ 見直しも…最高裁
結婚をしていない男女の間に生まれた「非嫡出子」の遺産相続分を「嫡出子」の2分の1と定めた民法の規定が、法の下の平等を保障した憲法に反するかが争われた家事審判で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は7日付で、審理を大法廷(裁判長・竹崎博允長官)に回付した。
規定を合憲とした95年の大法廷判例が見直される可能性があり、判断が注目される。
民法900条4号には「嫡出でない子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1とする」との規定がある。
大法廷は95年に合憲判断を示したが、15人の裁判官のうち5人が「違憲」と反対意見を述べていた。
その後も、小法廷が5回にわたって同様の判断を示しているが、賛否は毎回対立。
昨年9月の第2小法廷決定でも、4人のうち1人が反対意見を述べ、合憲とした1人も法改正を求めるなど、わずかな差で合憲判断が維持されてきた。
今回の審判は、和歌山県の嫡出子の女性が非嫡出子の弟との遺産分割を申し立て、和歌山家裁、大阪高裁とも弟の相続分を姉の2分の1としたため、弟側が特別抗告した。
違憲判断が出た場合、法律婚を尊重する現行法制度に大きな影響を与えることになる。
裁判所法や最高裁の規定によると、新たな憲法判断や判例変更の必要がある場合のほか、小法廷の裁判官の意見が同数で分かれたようなケースでは、審理が大法廷に回付される。
【伊藤一郎】
◇背景に家族や結婚に対する国民意識の変化
結婚していない男女間に生まれた「非嫡出子」の相続差別を巡る問題が、15年ぶりに大法廷で審理されることになった。
背景には、家族や結婚に対する国民意識の変化があるとみられる。
95年の大法廷決定は「民法が法律婚主義を採用している以上、規定には合理的根拠があり、立法府の裁量の限界を超えていない」と理由を述べている。
だが、決定前には地裁や高裁で違憲判断が相次ぎ、当時から「時代に逆行している」との批判があった。
その後の小法廷の合憲判断でも「社会事情や国民感情は大きく変動しており、立法当時は存在した差別を正当化する理由は失われたのではないか」との意見が表明された。
国の世論調査によると、規定について「現在の制度を変えない方がよい」と答えた人は49%(94年)から41%(06年)に減少。
「非嫡出子という理由で不利益な取り扱いをすべきでない」は55%(96年)から58%(06年)に微増した。
法相の諮問機関・法制審議会は、96年に相続差別の解消や選択的夫婦別姓を盛り込んだ民法改正案を答申したが、一部議員に反対が強く、法案の国会提出は見送られた。
千葉景子法相も同じ法案の国会提出を目指したが、閣内にも反発があり実現しなかった。
立法による解決が進まない現状を踏まえ、司法による救済を求める声も上がっている。
価値観が多様化する中、規定の合憲性をどう考えるのか。
15人の最高裁の裁判官たちが、くすぶり続けてきた意見対立に決着を付けることになる。
【伊藤一郎】
【これまでの経過】
結婚をしていない男女の間に生まれた「非嫡出子」の遺産相続分を「嫡出子」の2分の1と定めた民法が、「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反しないかという議論は、従来からありました。
これまでの経過は、次のとおりです。
(1)平成7年7月5日、最高裁判決にて、憲法14条には反しないという「合憲」の判断が示されました。
(2)その後、反対意見があるものの、
・平成14年11月22日
・平成15年3月31日
・平成15年3月28日
・平成16年10月14日
など、相次いで「合憲」の判断が示されてきました。
(3)相続分を平等とする民法改正の法案の検討
(4)国際連合の人権委員会から、民法改正に必要な措置をとるように勧告される
ことを経て、平成17年4月1日施行の民法改正においても見送られ、今日に至っています。
【時代の変化に法律がどう対応していくのか】
時代背景や価値観の多様化により、現在の法律が現代の考え方に合わなくなっている良い事例だと思います。
過去の時代の価値観で作られた法律が、現代の価値観にどう対応するのか、注目をしてみたいと思います。