7月6日、年金払い型の生命保険に相続税と所得税の両方を課税するのは違法であるとして、最高裁の判決が出されました。
この裁判は、平成18年11月7日に長崎地裁からスタートしており、相続関係者の間では密かに注目されていた事案です。
(毎日新聞7/6)
年金型生保 相続税と所得税 二重課税は違法 国側が敗訴
亡夫が加入していた年金払い型の生命保険に相続税と所得税の両方を課すのは違法として、長崎市の女性(49)が所得税の課税処分取り消しを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は6日、「違法な二重課税に当たる」との初判断を示し、原告の請求を認める判決を言い渡した。
大手生保1社当たり毎年数千人の遺族が所得税を徴収されているとされ、国側の逆転敗訴が確定したことで、還付請求の動きが広がるなど大きな影響を与えそうだ。
国税当局は1960年代前半以降、遺族が年金払い型の保険金を受け取る際、保険金の総額(年金受給権)の2~7割(受給期間によって異なる)を相続財産とみなして相続税を課税するのに加え、毎年の支払い分にも所得税を課してきた。
女性は夫が死亡した02年、毎年230万円を10年間にわたって年金形式で受け取る権利を取得。
1回目の年金を受け取った際に、保険会社に約22万円を源泉徴収された。
03年に10年分の総額2300万円の6割を相続財産として申告し、源泉徴収分の還付を求めたが認められなかったため、課税処分取り消しを求めて提訴した。
国税側は「年金受給権と毎年支払われる保険金は法的には異なる財産であり、双方に税金を課せる」と主張したが、小法廷は「同一の経済的価値に対する二重課税は認められない」としたうえで「原告は国税当局に所得税の還付を求めることができる」と述べた。
一方、年金払い型は一括払いより総額が増える。
判決は、相続税の課税対象にならなかった4割分については「将来の運用益」とみなせると判断し、女性が還付を求めた1年目は運用益がないため非課税としたが、2年目以降は段階的に所得税が発生するとした。
1審の長崎地裁判決(06年)は「二重課税で許されない」と請求を認めたが、2審の福岡高裁判決(07年)で逆転敗訴したため、女性側が上告していた。
扶養控除などの適用により、女性に還付される1年目の所得税は2万5600円になる。
【伊藤一郎】
◇年金払い型生命保険
保険料を負担した被保険者が死亡した場合に、遺族が保険金を受け取る死亡保険のうち、遺族が年金払いの受給方式を選べる特約を付けた保険商品。
広い意味での「私的年金」に含まれるとされる。
一括払いの受給を選択した場合、受給総額が減る代わりに所得税が課されないため、税務上の不公平を指摘する声があった。
国民年金や厚生年金など国が給付する「公的年金」の受給権を遺族が取得した場合は相続税も所得税も課されないため、今回のような問題は生じない。
【確かに還付請求をすることはできそうですが、現状は何ら変わりません】
国が敗訴したことにより、年金から源泉徴収されていた所得税の還付請求(税金を返してもらう手続き)を5年前まで遡ってすることができそうです。
しかし、国が敗訴したからといって、現状では何も変わりません。
なぜなら、所得税法により「年金を支払う保険会社は、源泉徴収をしなければならない」と規定されているため、所得税法を改正しない限り、今までと同じように源泉徴収が行われ続けます。
【所得税の還付請求をするには、契約者皆様の保険内容の理解が不可欠】
今後も変わりなく、年金保険から所得税が源泉徴収され続けます。
もし、平成22年(今年)に源泉徴収された所得税を還付(国から返してもらう)してもらうには、還付申告が必要となります。
還付申告が必要ということは、生命保険を契約している皆様自身が「還付申告をする」という行動を起こす必要があります。
還付申告をするには、皆様が契約している生命保険の内容を理解していなければ、申告書の書き方もわからないことになります。
この事案について、生命保険会社から関係するであろう方々へ注意喚起の書面が送られてくることが予想されます。
しかしながら、年金保険の契約をされている方が数百万人以上であることから、生命保険会社がすべての契約を確実に把握することは難しく、この事案に関係する場合でも、書面が届かない可能性もあります。
つまり、「自分の身は自分で守る」という心構えが必要だと思います。
したがいまして、今後、生命保険を新たに契約をするときには、皆様自身が、生命保険の契約内容を理解しておく必要があると思います。
【今朝入手した情報によると・・・】
昨日の最高裁の判決を受けて、今朝入手した情報によりますと、国税庁は何らかの対応を考えているようです。
具体的な内容は、長嶋のお客様には随時お伝えしていきます。
【参考ブログ】