先日、贈与税の申告と相続時精算課税制度のご相談がありましたのでご紹介します。
【ご相談】
昨年、相続税対策のために土地・建物を父から生前に贈与を受けました。
司法書士さんにお願いし、名義の変更の手続きも行っています。
また、不動産取得税の支払いも済ませています。
最近になり、税務署から「贈与税の申告のお知らせ」という書類が届いたのですが、私はどうすればよいのでしょうか。
贈与税を払いたくないので相続時精算課税を利用したいと考えています。
【税理士長嶋の回答】
贈与税の申告が必要になりますので、お早めに手続きされることをお勧めします。
また、相続時精算課税を利用することはできませんので、多額の贈与税を支払うことになると思います。
贈与税は原則として現金一括で支払うことになりますので、払える現金があるのかどうか、確認されることをお勧めします。
【税務署から届いた「贈与税の申告のお知らせ」とは?】
税務署から届いた「贈与税の申告のお知らせ」とは、そもそもどのようなものなのでしょうか。
簡単に言えば、期限までに贈与税の申告をしていないので、早めに申告してくださいと催促されているとご理解ください。
それでは、なぜ税務署は贈与があったことを知っているのでしょうか。
贈与があったことを知らなければ、そもそも「贈与税の申告のお知らせ」を送ることができません。
【なぜ税務署は贈与があったことを知っているのか?】
結論から申し上げると、法務局のデータが税務署に流れる仕組みになっているため、税務署は贈与があったことを知っているのです。
法務局のデータから税務署は贈与があったことを知っているため、贈与税の申告書を提出することが見込まれる人について、提出されているかどうかのチェックリストを作成しています。
ところが、贈与税の申告期限になっても贈与税の提出がなかったために「贈与税の申告のお知らせ」という書類を送ってきたのです。
ご相談者様の場合、土地・建物の名義を変更されています。
不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)には、名義変更をする理由が記載されることになります。
贈与により名義変更をしたのであれば「贈与」、売買により名義変更したのであれば「売買」、相続により名義変更したのであれば「相続」という形で記載されます。
税務署としては、贈与により名義変更されているのであれば、贈与税の申告書の提出があると考えます。
また、売買により名義変更されているのであれば、所得税の確定申告において土地・建物の譲渡所得の申告があると考えます。
税務署としては提出されるはずの申告書が提出されていなければ、納税者に催促をするのは当然のこととなります。
【相続時精算課税は利用できない】
相続時精算課税を利用するには、次の要件を満たさなければなりません。
(1)贈与税の申告書の提出期限(贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日)までに、贈与税の申告書を提出すること
(2)贈与税の申告書に「相続時精算課税選択届出書」を添付して提出すること
(3)戸籍の謄本などの一定の書類を提出すること
ご相談者様の場合、贈与税の申告期限までに贈与税の申告書を提出していないため、相続時精算課税を利用することができません。
この場合、次の算式により贈与税を計算します。
(財産の価額-110万円)×贈与税の税率
土地・建物の贈与を受けましたので、少なくとも1000万円単位の財産価値があると思います。
贈与税はそれなりの高額になると思います。
贈与税は原則として現金一括で支払うことになりますので、贈与税を払えるのかどうか、確認されることをお勧めします。
(参考)
生前贈与に相続時精算課税制度を活用する