(12/2読売新聞)
貸付金か贈与か–。
鳩山首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」の偽装献金問題に絡み、実母から鳩山首相側への多額の資金提供について、国税当局がどう判断するか注目されている。
全額贈与と認定されれば、首相に4億円を超える納税義務が発生するためだ。借用書がないことなどから、専門家の間では贈与になるとの見方が多いが、民法に基づけば口約束だけでも貸付金になる。
首相を巡る問題だけに、今後の納税者の申告に影響を与える可能性もある。
実母からの資金提供は、2002年頃から始まり、6年余で総額11億円以上に上っていることが既に判明。元秘書らは「母から鳩山首相への貸付金」と認識していたというが、借用書や返済の取り決めはなかった。所得を隠すなどの不正がない場合、徴収可能な贈与税は過去6年分。04~08年の資金提供計9億円に限っても、贈与認定されると4億円以上の納税が必要となる。
「首相の問題だけに、国税当局も慎重な対応を迫られるだろう」と話す国税OBの税理士。親子間の貸付金を贈与と認定されないために「きちんと契約を結び、利息を取る必要がある」と見る。別の税理士も「契約書類も利息もない状況で、貸付金と主張するのは難しいのでは」と同様の見方だ。
一方、民法では貸付金について「返還の約束」だけを定めていることを根拠に、「返済条件や利息が必要だとは法律に書いていない。国税当局が認定しているだけ」として、安易な贈与認定に否定的な税理士もいる。
国税庁は、民法上の貸付金を判断する際、〈1〉提供の理由や経緯〈2〉利息など返済金の有無〈3〉返済期限や返済方法など取り決めの内容–などを確認している。
同庁のホームページでは親子間の貸付金について、「『ある時払いの催促なし』または『出世払い』というような貸借の場合には、借入金そのものが贈与として取り扱われる」と注意喚起しているが、理論上は口約束でも貸付金になりうることもあるため、同庁は「一律に判断することはできない」とし、個々の事例ごとに判断しているのが実態だ。
親族間の貸付金を贈与と認定されたことを巡り、裁判に発展した例もある。04年の名古屋高裁判決は、「贈与税の課税は実質に着目するべきで、利益と同等の価値が将来返還されることが極めて確実であるなど、特別な事情がない限り贈与と認めるのが相当」と判断している。
鳩山首相は11月30日の参院本会議で「検察の解明を待って、法に照らして適切な対応を行いたい」と答弁、修正申告を示唆している。
◆目的によっては特例も◆
贈与税は、基礎控除額110万円(年間)を超えると、贈与額に応じて10~50%かかるが、特例もある。
例えば、住宅取得が目的の場合、親から子への贈与は、基礎控除を合わせて610万円(2009年1月から2年間)までは非課税となる。
これを上回ると課税の対象となるが、貸付金であれば課税されない。また、相続時精算課税制度を利用すれば、親1人から4000万円(同)までは贈与税が非課税となるが、親が亡くなると相続税の対象となる。
【税金の判断は一般常識としてどうなのか】
日本の税制は、適正かつ公平な課税を実現することを目的としています。
簡単に、「税金の判断は一般常識で判断する」と考えることができると思います。
親子間のお金の貸し借りは、一般的に行われています。
このお金の貸し借りを、一般常識で考えますと「親子ではなく、銀行などの金融機関(第三者)と行ったとき、どのような条件で行いますか?」というお話になると思います。
住宅ローンもそうですが、銀行からお金を借りるにあたり、
・契約書を作成する
・毎月返済する
・利息を払う
などが行われます。
民法上では、確かに口約束でもお金の貸し借りは成立しますが、口約束したことを証明するのは納税者の義務です。
これを証明できなければ「贈与」と言われても文句は言えません。
後日のトラブルを避けるため、贈与ではないという証明として、契約書を作成し、実際に利息を付けて返済をすることが実務上行われています。
【国税の判断に注目です】
繰り返しになりますが、日本の税制は、適正かつ公平な課税を実現することを目的としています。
国税の判断によっては、今後の贈与税の判断が変わる可能性があります。
国税の判断に注目をしたいと思います。