【税務調査は、高額で悪質な脱税行為などを重点的に行います】
このほど、国税庁より「平成20事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について 」が公表されました。
その内容は、平成20年7月から平成21年6月までの間に行われた所得税と消費税の税務調査の状況を取りまとめたものです。
税務署による税務調査は、限られた人数の中で行われるため、効率的な税務調査を行っています。
効率的な税務調査を行うため、高額で悪質な脱税行為などを重点的に調査をしています。
以下、日本と外国の間で起こる国際税務の問題を中心にご紹介します。
(参考:週刊税務通信№3088)
【所得税の税務調査の方法】
所得税の税務調査は、脱税行為などの状況により、次の4つに分類して行われます。
(1)特別調査
高額な脱税行為などが予想される人に対して、10日以上の日数をかけて行う税務調査
(2)一般調査
特別調査までの調査はしないが、6日程度の日数をかけて行う税務調査
(3)着眼調査
申告漏れの所得などの把握を、2~3日程度の日数をかけて行う税務調査
(4)簡易な接触
文書や納税者が税務署に訪問し、面接などで計算誤りなどを正しくする税務調査
なお、税務調査は(1)と(2)を重点的に行われています。
【税務調査の事例】
税務調査について、海外に関係する事例は、次のようなものがあります。
(1)海外の金融機関の預金や外国債券の利息を申告していなかった
(2)海外の会社から受け取っていた役員報酬を外国のみに申告を行い、日本では申告をしなくても良いと誤解をしていた
(3)海外の株式の売買を行い利益があったが、申告をしていなかった
【税務調査はどのようにして行われているのか】
現在、国税庁では、東京・大阪・名古屋・関東甲信越の各国税局に、「国際調査課及び国際化対応プロジェクトチーム」を設けています。
これにより、海外の事案についても積極的に税務調査が行われています。
具体的に税務調査を行う根拠となる情報の収集は、国外送金等調書や租税条約が活用されています。
(1)国外送金等調書
国外送金等調書とは、金融機関から税務署に提出される法定の報告書です。
・100万円を超える日本から海外の金融機関への送金
・100万円を超える海外から日本への金融機関への送金
をしたときは、金融機関から税務署へ報告書が提出されます。
この報告書が提出されることで、お金の流れがすべてわかります。
(2)租税条約
租税条約の目的は、国際的な経済活動を活発にさせることです。
この国際的な経済活動を活発にするため、
・国際的な二重課税を防ぐ
・国際的な脱税や脱法行為の防止
・税務当局間の国際協力
が行われています。
日本の税務当局は、脱税や脱法行為があると判断したときは、外国の税務当局に対して、その情報を入手することができます。
上記のように、脱税行為などの疑いがあるときは、税務署は調べればすぐにわかる仕組みになっています。
【国際税務は非常に難しい】
国税庁は、次のように述べています。
海外で発生する所得の申告漏れ事案が多いことから、「居住者は、所得の生じた場所が国の内外を問わず、そのすべての所得について所得税を納める義務がある。」ことを広報媒体を活用し、周知に努めていきます。
海外の所得が申告漏れとなる大きな原因として、
・申告漏れとわかっていて、申告漏れにしている
・申告漏れとは知らず、法律の解釈の誤りで、結果として申告漏れになってしまった
の2つがあると思います。
申告漏れとわかっていながら行うのは論外ですが、法律の解釈の誤りというのも少なからずあります。
このような国際税務のお話になりますと、
・日本では問題なくとも、海外では問題がある
・日本では問題があっても、海外では問題ない
ケースが起こりえます。
国際的な税務の判断は慎重に行いたいところです。