先日「会社経営者様からのご相談が急増しています」というブログ を書いております。
7月中に相続税の納税猶予の制度を受けるためのプランを作って欲しいとご依頼のあったお客様について、ある程度の試算が終わりました。
【相続税の納税猶予の制度を利用するメリットはあるのか!?】
まず、そもそも「相続税の納税猶予の制度を利用するメリットはあるのか?」を確認するため、お客様の相続税の試算、そして、具体的にどれくらいの相続税が猶予されるのか?を試算してみました。
この試算により、相続税が大幅に猶予されることが確認できて、初めてこの制度を利用するかどうかの検討をしても遅くはないと思います。
制度を利用することを前提として、先にお話を進めていき、蓋を開けてみれば、それほど相続税が猶予されなかったということだけは避けたいところです。
【相続税の納税猶予の制度を利用するときは株式の保有割合にご注意】
相続税の納税猶予の制度は、あくまでも「相続する会社の株式に対する相続税を猶予します」というものです。
そもそも、会長や社長が持っている会社の株式の比率が少なければ、もちろんのこと猶予される相続税も少なくなります。
【ご依頼をいただいたお客様の場合、猶予される相続税は10%にしかならず】
ご依頼をいただいたお客様について、猶予される相続税を試算してみました。
例えば、遺産の総額が2億円だったとすると
・会社の株式=8000万円(40%)
・預貯金や不動産=1億2000万円(60%)
会社の発行済株式が1万株だとすると、会長は4000株(40%)お持ちです。
すなわち、ある程度、株の名義変更が進んでいる会社さんです。
このお客様について、相続税の納税猶予の制度の具体的な効果を試算したところ、納める相続税は1割ほど少なくなりました。
例えば、会社の株式を相続した会社社長が納める相続税が1000万円だったとすると、納税猶予される相続税は、100万円。
つまり、残り9割の900万円は現金で納める必要があります。
ある程度、株の名義変更が進んでいる会社の場合、猶予される相続税はごく一部になるものと推測されます。
1割猶予される相続税のために、
・経済産業大臣への確認
↓
・経済産業大臣の認定
↓
・経済産業大臣や税務署へ、5年間毎年報告
↓
・その後、3年ごとの税務署への報告
など、手間暇をかけてまでするメリットがあるのかどうかというお話になります。
猶予される相続税が1割程度でしたら、今まで通りに株の名義変更をしたほうが、結果的にメリットになることも考えられます。
これらの試算結果をまとめ、7月中にご依頼をいただいたお客様に報告をしたいと思っています。
【債務を相続すると、納税猶予される相続税が少なくなります】
ご依頼をいただいたお客様は、生前からの計画的な相続税の納税猶予の制度を利用されますので、直接関係ないのですが、生前からの計画の場合、遺言書の作成の可能性もあるため、念のための補足をさせていただきます。
実際に相続が起こったとき、会社の後継者が葬式費用などの債務を相続したときは、その債務は、会社の株式の評価額からマイナスすることになっています。
これは、国税庁から公表されている新しい相続税の申告書の様式を見ていただくと、このことが確認できます。
つまり、会社の株式の評価額から葬式費用などの債務がマイナスをされるということは、猶予される相続税も少なくなるということです。
場合によっては、猶予される相続税がゼロになることもあります。
相続税だけを考えた場合、遺産分割をするにあたっては、葬式費用などの債務は、会社経営者は相続しないほうが有利になります。
したがいまして、遺言書や遺産分割協議書を作成する際は、相続税の影響まで十分に考える必要があると思います。