最近、会社経営者様からのご相談が急増しています。
その中には、友人の税理士からのご紹介なども含まれています。
やはり、中小企業の株式についての相続税の納税猶予(会社の株式に対する相続税が8割猶予)の制度ができたインパクトが非常に大きいのだと思います。
「経済産業大臣の確認→経済産業大臣の認定」のように、生前から会社の株式について事業承継を考えていく会社経営者様だけでなく、今年になり相続が起こった会社経営者様などについては、申請をすることにより、相続税の納税猶予の制度を利用することができます。
相続税の納税猶予制度は、昨年10月から施行されていますが、実際の法整備は、今年の春に法案が通ったばかり。
7月になり、ようやく国税庁のホームページに、この相続税の納税猶予制度を利用するにあたっての実務上の注意すべき点が公開されるようになりました。
このようなことから、ほとんどの税理士がまだ相続税の納税猶予制度についての実務を経験をしていない中で、会社経営者様より多数のご相談をいただけていることに、感謝を申し上げたいと思っています。
【相続税の納税猶予の制度の具体的な効果】
先日、相続税の納税猶予制度に対応した相続税の申告書の様式が、国税庁より発表されました。
現在、相続税の申告書を作成中のお客様について、相続税の納税猶予制度を利用すれば、具体的にどれくらいの相続税が猶予されるのか?を試算してみました。
相続税の税務ソフトは、まだ新しい相続税の申告書の様式に対応していないので、電卓をたたいてみました。
相続税の納税猶予の制度の具体的な効果は、株式の持ち株数やその他の状況により、もちろん結果は異なります。
このお客様について、相続税の納税猶予の制度の具体的な効果を試算したところ、納める相続税は1/3ほど少なくなりました。
例えば、会社の株式を相続した会社社長が納める相続税が3000万円だったとすると、納税猶予される相続税は、1000万円。
つまり、残り2/3の2000万円は現金で納める必要があります。
【相続税の納税猶予の制度は、あまり大きな効果は期待できない】
正直な感想ですが、あまり大きな効果は期待できないと思いました。
あくまで、このお客様についての感想です。
こちらのお客様の資産構成は、会社の株式が50%、その他の預貯金や不動産が50%です。
また、会長のお持ちの会社の株式は、全体の80%程度です。
例えば、遺産の総額が2億円の方ですと、
・会社の株式=1億円
・預貯金や不動産=1億円
会社の発行済株式が1万株だとすると、会長は8000株お持ちです。
このような資産構成は、会社経営者にとっては、よくあるお話だと思います。
会社の株式についての相続税が8割猶予されたとはいえ、2/3の相続税は通常通り、10ヶ月以内に現金で納める必要があります。
相続税の納税猶予制度は、利用すれば「それなりに」メリットはありますが、これをしておけば万全というわけではないと感じました。
幸いなことに、このお客様の場合、相続財産に多数の預貯金が含まれていますので、相続税を納めるためのお金を準備する必要はありません。
もし、相続財産の中に預貯金などが少ない場合、相続税を納めるために不動産を売却するなどをしなくてはならなくなります。
したがいまして、相続税の納税猶予の制度は、あくまでオマケに利用するという程度に考えておくことが望ましいと思います。
なお、相続税を納めるための現金を生前から準備しておくことの重要性は、相続税の納税猶予の制度を利用したとしても変わらないと思います。