遺産相続に関するご相談で、最近特に多いと感じるのは「親の介護をした」というものです。
遺産相続に関するご相談を受けて感じるのは、「親の面倒をみた相続人は、相続のとき、面倒をみなかった他の相続人よりも、有利であるべき(多く遺産を相続できる)」という考え方です。
法律(相続法)や家庭裁判所の解釈は、「親の面倒をみた相続人と面倒をみなかった相続人の権利は平等である」としています。
そのため、「介護をしたことについて、それを認めない法律(相続法)や家庭裁判所の判断はおかしい」と考える方が多いようです。
【親の面倒をみた相続人は、相続のとき、遺産を多く相続するべきなのか?】
古いデータではありますが、昭和61年9月に内閣府政府広報室が調査をしました「長寿社会に関する世論調査」 というものがあります。
質問の12番目に次のようなものがあります。
Q12 一般に,年をとった親の面倒をみることと遺産の相続について,どのように思いますか。この中ではどうでしょうか。
(ア) 親の面倒をみる子供だけが相続する
(イ) 親の面倒をみる子供が多く相続する
(ウ) 親の面倒をみる,みないにかかわらず,均等に相続する
(エ) 親の面倒をみる,みないにかかわらず,家を継ぐ子供だけが相続する
(オ) 親の面倒をみる,みないにかかわらず,家を継ぐ子供が多く相続する
その他
わからない
その回答結果は、次のようなものになりました。
(ア) 親の面倒をみる子供だけが相続する→19.3%
(イ) 親の面倒をみる子供が多く相続する→38.9%
(ウ) 親の面倒をみる,みないにかかわらず,均等に相続する→19.5%
(エ) 親の面倒をみる,みないにかかわらず,家を継ぐ子供だけが相続する→5.1%
(オ) 親の面倒をみる,みないにかかわらず,家を継ぐ子供が多く相続する→8.0%
その他→0.6%
わからない→8.6%
このようなデータからも、「親の面倒をみた相続人は、相続のとき、面倒を見なかった他の相続人よりも、有利であるべき(多く遺産を相続できる)」という考え方はあると思います。
昭和61年当時ですので、まだ「家督相続」という考え方が残っていた時代だと思います。
現在では、(エ)と(オ)の比率が大きく下がり、(イ)と(ウ)の比率が高まっているように想像します。
【親の面倒をみた相続人は「損」、面倒をみなかった他の相続人は「得」!?】
「親の面倒をみた相続人は、相続のとき、面倒をみなかった他の相続人よりも、有利であるべき(多く遺産を相続できる)」という考え方から、次のような声が多いように感じます。
・介護をしたことについて、それを認めない家庭裁判所の判断は、おかしい
・親の面倒をみた相続人と面倒をみなかった相続人の相続の権利(法定相続分)が平等というのは、納得できない
極端な話になりますが、相続の権利が同じであれば、
・親の面倒をみた相続人は「損」
・面倒をみなかった相続人は「得」
という解釈になっても致し方ないところだと思います。
ご相談者さんの口から、このような言葉で出てくることが、多々あります。
そして、実際の相続の現場で接しているからこそ、このような国民感情と法律(相続法)の解釈が合わないことに心苦しさを感じます。
なぜ、国民感情と法律(相続法)の解釈が合わないのか?
親の面倒をみた相続人について、面倒をみたことについて、何か有利になる方法はないのか?
何回かに分けて考えていきたいと思います。