先日、相続税の申告の作成をご依頼いただいたお客様にお会いしてきました。
相続税対策のために生前贈与をされていたとのことで、相続開始前3年以内の贈与を気にされていました。
結論から申し上げると、お客様が相続税対策として行った生前贈与はほとんど意味がない結果となっていました。
【相続開始前3年以内の贈与とは】
相続税を計算するときにおいて、生前贈与された財産は次のように取り扱うとされています。
(1)相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときは、相続財産にプラスすること
(2)相続財産にプラスされるのは、相続などにより財産を取得した人に限られる
(3)相続財産にプラスされた贈与財産について、贈与税を払っているときは、相続税から差し引く
なお、相続開始前3年以内に財産が贈与されていれば、贈与税が課税されたかどうかは関係なく、すべての財産を相続財産にプラスします。
【相続税対策として行った生前贈与はほとんど意味がなかった】
お客様が相続税対策として生前贈与を始めたのは偶然にも3年前、子供さん・お孫さんに対して生前贈与を行ってきたそうです。
亡くなられたお父様から子供さん・お孫さんへの生前贈与の状況をお聞きすると、お父様の銀行口座から子供さん・お孫さんの銀行口座へ毎年110万円ずつ振り込みをされていました。
贈与をした証拠をしっかりと残されていましたので、生前贈与の仕方としては100点満点だと思います。
ところが、残念なことに生前贈与が行われていたのはすべて相続開始前3年以内でした。
相続開始前3年以内とは、死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間のことをいいます。
例えば、平成25年12月21日に亡くなられた場合、平成22年12月21日から平成25年12月21日までの間が「相続開始前3年」ということになります。
お客様のケースでは、相続税対策として行った生前贈与はすべて相続財産にプラスしなければならないという結果になってしまいました。
【相続開始前3年以内の贈与財産を相続財産にプラスするのは相続人】
お客様にとって不幸中の幸いだったのは、お孫さんにも生前贈与を行っていたことです。
相続開始前3年以内の贈与財産を相続財産にプラスするのは、基本的には相続人です。
お孫さんは相続人ではありませんので、贈与された財産を相続財産にプラスする必要はありません。
その理由は、贈与財産を相続財産にプラスするのは、相続などにより財産を取得した人に限られるためです。
お客様のケースの結論としては、次のようになります。
(1)子供さんへの贈与財産は、すべて相続財産にプラスする。
(2)お孫さんへの贈与財産は、相続財産にプラスする必要はない。
【相続税対策として生前贈与を行うときは元気なうちから始めておく】
お客様は生前贈与について次のようなことをおっしゃっていました。
「父がこんなに早く亡くなるとは思っていなかったので、もっと早くに始めておけばよかった。」
相続税対策に生前贈与を活用するときは、一般的には贈与税の非課税である110万円の範囲内で行われます。
贈与できる金額が少額であることから、生前贈与を活用して相続税対策を行おうとすると時間がかかります。
また、相続開始前3年以内の贈与は相続財産にプラスされることから、余計に時間がかかります。
このようなことから、相続税対策に生前贈与を活用するときは、一日も早くお元気なうちから始めておくのがよいでしょう。
さらに、相続開始前3年以内の贈与は孫には適用されない(養子縁組をしているときは除きます)ため、お孫さんも巻き込んで生前贈与を検討することも一考かと思います。
【相続税申告参考ブログ】