先日、次のような遺産相続に関するご相談がありましたのでご紹介します。
なお、家族構成などその他の内容について、実際のものに修正を加えています。
【ご相談内容】
先月に父が他界しました。
相続人は兄弟3人です。
父には借金がありましたので、相続放棄の手続きをしています。
父は県民共済に加入しておりまして、相続放棄をしても生命保険金は受け取ることができると聞きましたので、その手続きをしています。
(1)相続放棄をして受け取った県民共済の生命保険金には、税金がかかるのでしょうか?
(2)私たち兄弟は相続放棄をしましたが、相続税の申告をしなければならないのでしょうか?
今後どのようにしていけばよいのか全くわかりません、よろしくお願いします。
【生命保険金には相続税がかかります】
県民共済の契約内容が、
・被保険者→お父様
・保険契約者→お父様
・保険金受取人→ご兄弟
ということを前提として、お話させていただきます。
この保険契約のとき、相続税がかかります。
これ以外の保険契約ですと、所得税・贈与税のお話になりますので、ぜひ保険契約の確認をお願いします。
【生命保険金は相続財産ではありません】
生命保険金は相続財産ではありません。
ここで言う相続財産とは、遺産分けのときの相続財産です。
生命保険金は、保険会社との契約により支払われるものです。
つまり、生命保険金は保険金受取人の財産であって、相続財産ではありません。
【相続財産ではないのに相続税がかかる!?】
生命保険金は、相続財産ではありません。
相続財産ではないのに、なぜ相続税がかかるのか?
昔の人は、次のように考えました。
・現金を持っていれば相続税がかかるが、生命保険金だと相続税がかからない
↓
・持っている現金を生命保険の保険料として払えば、現金が少なくなり、相続税が安くなる
↓
・生命保険金をもらったとき、生命保険金は相続財産ではないので、相続税がかからない
↓
・生命保険に入れば、相続税を払わずに、相続人に財産(現金)を渡せる
国民がこのようなことをしますと、国としては相続税の税収が減ります。
そこで国は、「生命保険金は、本当は相続財産ではありませんが、相続税を計算するときは相続財産とします」ということに決めました。
そういう意味で、生命保険金は「みなし相続財産」と言われています。
生命保険金が相続財産とされるのは、相続税を計算するときだけです。
・遺産分けのときの相続財産(民法)
・相続税を計算するときの相続財産(相続税法)
はまったく違うものですので、ご注意ください。
【生命保険金が相続税の非課税枠を超えると相続税の申告が必要です】
生命保険金は、相続税を計算するときには、相続財産となります。
したがいまして、原則は、相続税の申告が必要です。
ただし、生命保険金が相続税の非課税枠を超えるときのみです。
相続税の非課税枠は、次の算式で計算します。
「5000万円+法定相続人の数×1000万円」
この「法定相続人の数」は、相続放棄をする前の相続人の数です。
兄弟が3人いらっしゃるので、法定相続人は3人となります。
相続税の非課税枠は、「5000万円+法定相続人の数(3人)×1000万円=8000万円」と計算できます。
つまり、生命保険金が8000万円を超えているようですと、相続税の申告が必要になります。
【生命保険金には非課税枠があるのでは?】
相続税を計算するとき、生命保険金には非課税枠があります。
生命保険金の非課税枠は次の算式で計算します。
「500万円×法定相続人の数」
この生命保険金の非課税枠は、相続人が生命保険金を受け取ったときのお話です。
ご兄弟は相続放棄をされるので、相続人として生命保険金を受け取ったのではありません。
したがいまして、相続放棄をしますと「生命保険金の非課税枠」は使えませんので、ご注意ください。