先日、相続税についてご相談があったお客様にお会いしてきました。
詳しいお話を伺うと、相続税の問題に関連して、遺言書があったことで逆にトラブルになっているという問題を抱えておられました。
【会社経営者であることをまったく考慮していない遺言書】
お父様が昨年亡くなられ、今年になり相続税の申告を済まされました。
ところが、遺言書が遺されていたものの、中途半端な作り方をしていることで逆にトラブルになり、相続税の申告期限までに遺産分割が終わらず、余計な相続税の負担になったそうです。
中途半端な内容となっていた遺言書は、司法書士の指導により作成されたものでした。
具体的に何が中途半端だったのかといえば、お客様のご家族が会社を経営されておられるということをまったく考慮されていない遺言書でした。
会社経営をされているご家族にとって最も重要なものの一つとして、会社の株式を誰が引き継ぐのかということがあります。
つまり、家業を今後相続人の中の誰が引き継いでいくのかということです。
もちろんのこと、会社の株を保有しなければ社内での発言権がありません。
この会社の株の取り扱いが遺言書に記載されていなかったのです。
さらに、会社経営者であれば、個人の財布から会社に資金を貸し付けることは多々ありますが、この会社への貸付金を誰が引き継ぐのかの記載もありませんでした。
お父様から会社へ貸し付けた資金は、貸付金として相続財産に含まれるため、遺言書に取り扱いの記載がなければ相続人全員で話し合いをしなければなりません。
会社に関係する財産を相続人の中の誰が相続するのかが決まらず、顧問税理士さんの指導により、未分割の状態で相続税の申告を済まされました。
【子供のお使いレベルの仕事では専門家とはいえない】
税理士長嶋は、遺言書を作成した司法書士が遺産相続に詳しくないであろうと推測できましたので、お客様に次のような質問をしてみました。
・どちらの司法書士に遺言書作成の依頼をされたのか?
・トラブルになった後、この件について司法書士は何かおっしゃっていたか?
お客様のお話は次のようなことでした。
・司法書士事務所の代表は年配の方だったが、実際に遺言書の作成の手続きをしたのは若手の方だった
・会社の株や貸付金について、遺言書を作成されるお父様から何も言われなかったので記載しなかった
若手とはいえ、司法書士資格を持つ専門家です。
遺言書を作成されるお父様から何も言われなかったから対応しなかったようでは「子供のお使い」と同じレベルであり、専門家責任を問われても文句が言えない失態です。
最近、相続専門と名乗る専門家が非常に多くなったきたという印象です。
相続のことをよく知らないのに、単に仕事が欲しいために「専門」と名乗っている方も混在しています。
インターネットが普及したことで、専門家を探すことが簡単になったことは、依頼をされるみなさまにとってはとても幸運な時代だと思います。
しかしながら、誰が本当に相続を専門としているのかを見極めることが同時に求められるようになったのは、依頼をされるみなさまにとってはとても不幸なことだと思います。
専門家と名乗る人の中にも遺産相続や相続税に詳しくない人もいる、ということを十分にご理解いただきたいと思います。