先日、次のような退職金の運用に関するご相談がありましたのでご紹介します。
なお、家族構成などその他の内容について、実際のものに修正を加えています。
【ご相談内容】
来年の春に定年退職を迎えます。
退職金の運用で、いくつかの銀行から提案を受けています。
退職金限定の運用プランがあり、定期預金の金利が6%、60万円の利息を受け取れるようです。
いまどき6%の金利はないので、退職金を銀行に預けようと思っています。
退職金を銀行に預けても良いと思われますでしょうか?
【銀行から提案された内容】
退職金のうち、2000万円を銀行で運用。
・そのうち1000万円は定期預金に預ける
・残りの1000万円は投資信託で運用する
【金利は確かに6%ですが・・・】
長嶋は、ご相談者に質問してみました。
長嶋:定期預金の期間はどれくらいですか?
ご相談者:3ヶ月です。
長嶋:金利は確かに6%ですが、3ヶ月の定期預金ですので、年利6%×3ヶ月/12ヶ月=1.5%
つまり、年利1.5%の金利となります。
また、利息には20%の税金がかかりますので、税引後の利率は1.2%となります。
そうしますと、1000万円×1.2%=12万円の利息となり、60万円の利息はつかないことになります。
ご相談者:60万円の利息が付くのではなかったのですね・・・
【投資信託にかかる費用】
長嶋は続けてお話をさせていただきました。
長嶋:投資信託は、購入時に3%程度の費用がかかります。
ご相談者:はい、これは銀行の方もお話してくれました。
長嶋:投資信託を持っている間、1%程度(最大2%)の費用もかかります。
ご相談者:1%の費用というお話は銀行の方から聞いていません・・・
【銀行に預けることが本当にお得なのか!?】
<銀行に預けることによるもうけ>
・定期預金の利息→12万円
<銀行に払う費用>
・投資信託の購入費用→1000万円×3.15%(消費税込)=31.5万円
・投資信託を持っている間の費用→1000万円×年1.05%(消費税込)=10.5万円
合計、42万円の費用を銀行に払います。
単純に、12万円(もうけ)-42万円(費用)=30万円の赤字です。
投資信託で30万円の運用益が出れば、プラスマイナスゼロです。
つまり、投資信託で3%以上の運用利回りが必要です。
投資信託で3%以上の運用利回りを出せる自信があるのでしたら、退職金運用プランを利用することも有効だと思います。
しかしながら、
・投資信託というリスクのあるものに投資をしたくない
・退職金の元本を減らしたくない
と思われるのでしたら、退職金運用プランはお勧めしません。
【退職金を投資信託で運用する必要があるのか?】
退職金は年金と並んで、老後の生活費として使うことができる大きな資金です。
将来、生活費として使う可能性がある資金ですので、元本が減ることはあまり好ましくないと思います。
安全に持っておきたい退職金を、投資信託というリスクの高いものに投資をしてよいのか?というお話です。
もしも元本が減ってしまったら、
・老後の生活費として使えない(老後の生活ができなくなるかもしれない)
・老後に入院をしたとき、多額の入院費用を払うことができなくなる(安心して入院できません)
・計画していた毎年の海外旅行もできなくなる(新しく始めてみたいことや趣味ができなくなる)
ことも考えられます。
【退職金の運用方法を決めること、それは老後の生活をどう過ごすのか?】
ご自身の今後の老後の生活をどのように過ごすのか?
これにより、退職金をどう使うのか(投資するのか貯蓄するのか生活費として使うのか)が変わってくるかと思います。
退職金の運用方法を決めること、それはご自身の老後の生活の計画を立てることになると思います。
まずは、その計画を立てることから始められてはいかがでしょうか。