先日、芦屋の長嶋事務所にて次のようなご相談がありました。
10年前に起きた父の相続のときに、相続税を納めるのが大変でした。
子供たちに大変な思いをさせたくはありません。
我が家は、代々農業を営んでいます。
【家族構成】
相談者・母・配偶者・子供2人、兄弟1人
【ご相談の経緯(※相続税の税額などの数字は実際の税額とは異なります)】
10年前の父の相続のとき、相続税は1億5000万円かかりました。
そのうち、
(1)5000万円は、現金で相続税を納めました。
(2)5000万円は、金融機関より借り入れをして、相続税を納めました。
(3)残り5000万円は、農地に対する相続税ですので、相続税の納税猶予の制度を利用しています。
あと10年、私(ご相談者)が農業を営めば5000万円の相続税は免除されます。
父の相続の際、母の相続のときのことを考え、相続税がかからない範囲内で、母は父の遺産を相続しています。
農地は、私(ご相談者)が相続し、残りの遺産は私(ご相談者)と兄弟で相続をしています。
私(ご相談者)のときの相続では、相続税がかかりそうです。
【まさか相続税を納めることになる!?】
ご相談者は父の相続があった10年前に「母は相続税がかからない範囲内で遺産相続をしている」ので、母に相続があっても相続税を納める必要はないと考えておられました。
長嶋ブログで以前からご紹介しておりますように、この年末から年明けにかけて「相続税の増税」が発表されようとしています。
相続税の増税とは、簡単に「相続税の非課税枠の縮小」です。
現行の相続税法での相続税の非課税枠は「5000万円+1000万円×法定相続人の数」です。
ご相談者の事例ですと、母に相続があった場合、「5000万円+1000万円×2人(私と兄弟)」=7000万円。
つまり、7000万円が相続税の非課税枠となります。
今巷でウワサになっているのは、相続税の非課税枠が半分程度になるということです。
つまり、相続税の非課税枠は3500万円程度が想定されます。
仮に、母の遺産が7000万円、相続税の非課税枠を3500万円とすると、7000万円-3500万円=3500万円。
3500万円に対して相続税が課税されます。
改正される相続税の税率が現在の相続税法と同じと仮定すると、500万円の相続税を納める計算になります。
さらに、改正相続税法では、相続税率のアップも検討されていますので、相続税は500万円よりも増える可能性が高いです。
ご相談者は母の相続について、今まで相続税はかからないと考えておられましたが、相続税法が改正されることにより相続税を納めることになりそうです。
一般的に、農家さんや不動産オーナーさんは現金をあまりお持ちでなく、高額な土地などの不動産ばかりお持ちで、相続税を納めることに苦労されている方が多いので、早めにご相談いただいたことで「相続税を納めるにはどうすればよいか」などの対策をすることができそうです。
【子供さんは農業を継ぐのか?】
父の相続のときに、農地に対する相続税について、相続税の納税猶予の制度を利用しているので、5000万円の相続税の納税は猶予されています。
今は、ご相談者が農業を営んでいるので納税猶予になっています。
この制度は、農地を相続した方が20年間農業を営めば、農地に対する相続税は免除されます。
ただ・・・
ご相談者の相続のとき、先祖代代に伝わる農地は将来の相続人である子供さんが相続することになると思います。
このとき、子供さんが農業をされますと、ご相談者と同じように「農地に対する相続税の納税猶予(いずれ納税免除)」の制度を利用できます。
仮に、子供さんが農業をされないとすれば、単純に5000万円の相続税を納めることになります。
はたして、子供さんは5000万円の相続税を納めることができるのでしょうか?
子供さんは、ご実家から遠方の地で既に働かれており、またご結婚もされています。
このような状況で農業を継ぐことを確実に約束することができるでしょうか・・・
早いうちに家族会議を開くことをオススメしました。
【親子三代にわたっての相続対策が必要】
ご相談によって、はっきりとわかったこと。
(1)母の相続のとき、相続税を納める可能性が高い(ご相談前は相続税がかからないと考えておられた)。
(2)私(ご相談者)の相続のとき、相続税を納めることができるのか?
(3)子供さんが農業を継がなければ、5000万円の相続税を将来納める可能性がある。
10年前の父の相続のときには、税理士などの専門家が入らずご相談者ご自身で相続手続きをされたそうです。
もし、今回ご相談をされなかったとしたら・・・
長嶋はまだ30代と若いので、親子三代にわたって責任を持ってサポートをさせていただきます。
【相続対策・相続税対策の見直しをオススメします】
この事例からもわかるように、相続対策・相続税対策を既にされている方は、早急に現状の対策手段が良いのかどうかの検討をされることをオススメします。