平成21年度税制改正で予定されている事業承継税制(自社株80%納税猶予)。 この事業承継税制は、来年の通常国会で成立が予定され、成立したときには平成20年10月1日にさかのぼって適用されることになっています。 さらに、事業承継税制の成立により、相続税の計算方法が変更され、相続税が増税されることも想定されています。
【もともとの法律の考え方】
もともと法律には、次のような考え方があります。 「新たに法律が定められた時や法律が改正された時には、その法律の施行より前にさかのぼってその法律は適用されない。」 これを「不利益不遡及(ふりえきふそきゅう)の原則」と言います。
国民にとって不利な法律の制定・改正があったときは、さかのぼって法律を適用しないという考え方です。言い換えますと、国民にとって有利な法律の制定・改正に限っては、さかのぼって法律を適用します。 もちろんのこと、税法にもこの考え方があるものと思われます。
【事業承継税制を利用した場合、改正相続税法をさかのぼって適用することを検討】
税務当局は、事業承継税制を利用する相続では、相続税の計算方法が変更され相続税が増税になったとしても全相続人について、改正相続税法を平成20年10月1日にさかのぼって適用する案が検討されています。
【もともとの法律の考え方に反するのでは?】
税務当局の案の通り、改正相続税法がさかのぼって適用されますと、現行の相続税法に比べて相続税が増税(国民にとって不利)になることも考えられます。
税務当局は次のように考えているようです。 ・事業承継税制を利用するかどうかは、相続税を納める方の判断。 ・この事業承継税制を利用するということは、会社後継者だけでなく会社後継者以外の相続人の方も同意をしたと考えられる。
これらのことから税務当局は、たとえ相続税が増税になる結果となったとしても「もともとの法律の考え方」には反しない(相続税が増税されるなど不利になることがわかっていながら事業承継税制を利用したのは相続税を納める方なので、その意思を尊重するというような解釈)という見解のようです。
【事業承継とは関係ない相続の場合】
事業承継とは関係ない相続の場合には、改正相続税法は平成20年10月1日にさかのぼることなく、改正相続税法の公布日から適用される方向性です。
【事業承継税制を利用するかの検討が必要】
事業承継税制を利用する場合、税務当局の案の通り、改正相続税法がさかのぼって適用されますと、現行の相続税法に比べて相続税が増税になることも考えられます。 したがいまして、事業承継税制の利用をお考えのみなさまにおかれましては、現行の相続税法での相続税と改正相続税法での相続税との試算をすることも検討されてはいかがでしょうか。
以上、現時点での改正相続税法についての速報です。 今後の動きによってはこの情報の内容が変わっていることもあります。 今後の相続税法改正の動きにご注目ください。
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