先日、信託銀行さんから遺言信託の利用を勧められている方が、芦屋の長嶋事務所に来られました。
ご相談の内容は、次のようなものでした。
信託銀行で遺言信託を利用したときと、税理士が行う相続税業務との料金の違いについて
【母の気持ちとしては、信託銀行にお世話になりたい】
ご相談に来られたのは、将来相続人となる子供さん。
遺言信託の利用を勧められているのは、お母様でした。
お母様は、子供さんへ次のようにおっしゃったそうです。
「将来的にはあなた(子供さん)の財産になるのだから、相続関係はすべてあなた(子供さん)に任せます」。
お母様のお気持ちとしては、昔からお付き合いのある信託銀行さんに、相続などを任せたいそうです。
以下、相談者(以下「相談者Aさん」と言います。」と長嶋のやり取りです。
【私(相談者)の気持ちとしては、信託銀行が信用できない】
相談者Aさん:確かに将来的には私の財産になるのかもしれません。ですが、母の財産なので母の意向に沿う方法で相続関係の手続きを行いたいのです。
長嶋:そうですね、お母様のお気持ちが一番大事だと思いますので、信託銀行さんでお願いされたらどうでしょう。
相談者Aさん:ただ・・・私自身、信託銀行が信用できないのです。母に投資信託や生命保険を勧めて購入させていることが許せません。
今、経済の調子が悪いので、投資信託は毎日1000万円単位で損をしています。
損をさせるような商品を母に買わせていたというのが許せないのです・・・
長嶋:経済は、調子が良いときもあれば悪い時もありますので・・・
相談者Aさん:信託銀行の担当者に投資信託を解約するようお願いしたら「投資は長期投資が基本です。もうしばらく様子を見ましょう」と言われました。
別の銀行の担当者も家に出入りしているので、別の銀行の担当者に投資信託を解約したほうが良いかを相談したところ「今すぐに解約しましょう、別の投資信託に切り替えましょう」と言われました。
どちらの言葉を信用していいのかわかりません。結局、銀行は商売なのですね・・・
長嶋:銀行さんは商売ですから、自分の都合の悪いことは言わないと思います。
信託銀行にとっては投資信託を解約されたら困りますし、逆に他の銀行の担当者にしてみれば、投資信託を解約させて自分の銀行の投資信託を買ってもらいたいと思うのは当然だと思います。
ところで、Aさんのお気持ちとしては、どうされたいのでしょうか?
相談者Aさん:母の財産なので、損をしなければいいと思っています。株式の相場が回復したところで、投資信託を解約したいと思っています。
長嶋:それでしたら、株式の相場が回復するまで投資信託を持っておかれたらいかがでしょう。
相談者Aさん:はい、株式の相場が回復するまで投資信託を持っておくことにします。
【信託銀行の遺言信託と税理士の相続対策の料金の違い】
相談者Aさん:信託銀行の遺言信託と税理士の相続業務の料金はおいくらくらいなのでしょうか?
長嶋:信託銀行さんの遺言信託は、一般的に総額500万円前後くらいかかると聞いています。
・遺言作成時→10~30万円
・遺言に従って遺産を分ける時→100万円~
・相続税の申告(お抱えの税理士に依頼)→300万円~
相談者Aさん:初めて知りました、税理士の場合はおいくらくらいでしょうか?
長嶋:遺産の総額、相続人さんの複雑さで変わってくるので、はっきりと○○円と言えないのが正直なところです。
ただ、一般的には、遺産の総額の0.5~1%程度を提示することが多いと思います。
例えば、遺産が1億円ですと、1億円×1%=100万円。このような計算をされる税理士が多いと思います。
相談者Aさん:費用だけを考えると、税理士にお願いした方が安くなりそうですね・・・
長嶋:費用だけをみれば、確かにそうなるかもしれません。もちろん、信託銀行さんも良い仕事をしてくれます。
お母様のご意向もありますので、信託銀行さんで遺言信託を利用して、それを長嶋がチェックするということもできます。
Aさんのお気持ちを考えると、信託銀行さんが本当に良い仕事をしてくれているのか気になると思いますので、第三者として長嶋がチェックさせていただきます。
相談者Aさん:そんなこともできるのですね・・・
母はまだ元気で今すぐに相続が起きるというわけではありませんので、信託銀行と税理士のどちらにお願いするかもう一度よく考えてみます。
【相談者Aさんは話を聞いて欲しかったようです】
相談者Aさんのお宅には、信託銀行や別の銀行の担当者から毎日のように連絡があるそうです。
信託銀行→遺言信託をしましょう
別の銀行の担当者→あの投資信託は解約されました?
もういい加減うんざりしている、愚痴のようなものをたくさんこぼされておりました。
相談者Aさんは、こういったお話を誰かに聞いて欲しかったのだと思います。
そして、お母様のお気持ち(信託銀行さんに任せたい)と相談者Aさんご自身のお気持ち(信託銀行さんは信用できない)の狭間で悩んでおられることを第三者の声を聴くことで、相談者Aさん自身の気持ちの整理をしたかったのだと思います。
また、投資信託で毎日1000万円単位の損が出ていることについて、ご自身でどうすればよいかわかっているけれど、もう一歩が踏み出せない。
誰かに背中を押して欲しかったのだとも思います、利害関係のない第三者に・・・
このように、将来相続人となる方のお気持ちが少しでも軽くなるようなお話ができれば長嶋も嬉しいです。