先日、4つの会社を経営されている社長が、芦屋の長嶋事務所に来られました。
ご相談の内容は次のようなものでした
・会社の株式(自社株)の相続税評価額が高額になりそうなので、相続税の節税をしたい。
・会社の経営をそろそろ長男に譲りたい。株主が多数いますので、自社株の整理をしたほうがよいのか。
【自社株の相続税の節税について】
4つの会社を経営されており、それぞれの会社がそれぞれの株式を持ち合っている状況でした。
堅実な会社経営をされてきた社長ですので、自社株の相続税評価額が高額になっています。
<長嶋の回答>
自社株の相続税評価額を下げながら、譲渡・贈与などを活用して、会社後継者である長男さんに少しずつ渡していくことも有効です。
自社株の相続税評価額を下げることが相続税の節税になります。
また、長男さんに自社株を渡すことで自社株は社長の相続財産から切り離されるので、相続財産が少なくなります。
その結果、相続税の節税につながります。
<余談>
中小企業経営承継円滑化法(相続税の80%納税猶予)は使い勝手が悪いこと、社長はしっかりと理解されておられました。
この法律を利用しても、相続税の負担について根本的な解決にならないことも理解されておられました。
そういった意味では、お話を進めやすかったです。
【自社株の整理について】
従業員持株会や社長のご兄弟などが株主になっており、長男さんに会社の経営を譲るときに面倒なことになりはしないかと心配されておられました。
<長嶋の回答>
できるならば、会社後継者である長男さんに会社の株式を集中させたほうがいいと思います。
相続による争いが起こらないようでしたら、社長のご意向でもまったく問題がありません。
【相続税を払うことができるのか!?】
ご相談された社長は堅実な会社経営をされてきました。
会社の業績が悪くなっても従業員を路頭に迷わせることだけはさせてはいけないという「従業員を大事にする社長」です。
そのため、社長自身の給与も低めに抑えてこられた結果、会社内にはたくさんの現金が残りました。
その反面・・・
・会社の株式の相続税評価額が高額になってしまいました。
・社長自身の給与を低めに抑えてありますので、社長自身はあまり現金をお持ちではありませんでした。
つまり、相続が起きたとき、社長自身は現金をお持ちでないので、相続税を払えるのか!?という問題が出てきました。
会社の株式は流動性がないので、売るにしても簡単に売れません。
そして、会社の株式の相続税評価額は高額になるので、会社の株式を買い取れる方も限られてきます。
仮に、他人さんに会社の株式を売却すると、会社経営者である長男さんの会社の経営権は確保できるのか?という問題が出てきます。
また、会社自身が会社の株式を買い取ることも考えられますが、会社から現金が出ていくと会社経営(資金繰りなど)に影響はないか?
など、たくさんの検討事項が出てきます。
相続税の対策といいますと、「相続税の節税」に目が行きがちです。
この事例のように、相続税を払うことができるのか?ということも非常に重要だと思います。
もし、相続税を払うことができなければ・・・
ご自宅を売却して相続税を払うといった最悪の結末を迎えることになりかねません。
残された社長の奥様はどうやって生活をしていけばよいのでしょうか?
相続税の納税で、現金もありません。また、自宅もありません・・・
相続税を払うことができるのか?という問題は、会社社長だけのことではありません。
土地をたくさんお持ちの農家さんや不動産オーナーさんにも同じことが言えます。
<農家さんのケース>
農地を売るには、
・農業委員会の許可が必要
・農地が建物を建てることができない地域にあれば、建物を建てることができない
ことから、農地は簡単に売ることができません。
<不動産オーナーさんのケース>
賃貸マンションの敷地となっている土地は、
・入居者の方に立ち退いていただく必要がある
・賃貸マンション一棟丸ごとでしか売却することはできない
ことから、賃貸マンションの敷地となっている土地は簡単に売ることができません。
「簡単に売ることができない」というキーワードは、会社の株式とまったく同じです。