先日、相続税対策についてご相談があったお客様にお会いしてきました。
お話を伺うと「相続税が改正され相続税の基礎控除が引き下げられることが心配」とのことでした。
【アパートに空室が多くなり建て替えも検討】
お客様は、アパート経営をされていました。
建築から20年が過ぎ、空室が目立ってきたとのこと。
賃貸アパートとして使われている土地や建物の相続税評価は「賃貸割合」を考慮しますので、空室が多くなれば自用地に近い相続税評価となります。
長期間にわたって空室になっている部屋もあり、相続税の増加が見込まれることも心配されておられました。
そこで、お客様は相続税対策として次の2つのことを検討されていました。
(1)アパートのリフォームや建て替え
(2)アパートを潰して、ご両親と一緒に住む家を建てる
【リフォームや建て替えをするにはお金が必要】
お客様がまず最初に検討されていたのは「アパートのリフォームや建て替え」です。
税理士長嶋は、お客様に次のようなことをお話しました。
(1)リフォームや建て替えをするにはお金が必要
(2)リフォームや建て替えなど大きな出費をしても、満室になる保証は何もない
(3)業者が勧めてくる「家賃保証」は論外
(4)これらを踏まえて、相続税の節税効果と比較してもメリットがあると思うのであれば、リフォームや建て替えを実行されてはどうか
【相続税の節税のために引っ越しをすることが現実的なのか?】
次にお客様が検討されていたのは「アパートを潰して、ご両親と一緒に住む家を建てる」ということでした。
ご両親と一緒に住む家を建てることで「小規模宅地の特例」を利用することを狙ったものです。
ところが、お客様とご両親は遠方で生活されていました。
税理士長嶋は、お客様に次のようなことをお話しました。
(1)相続税の節税のために引っ越しをすることは現実的なのか
(2)新しい住まいの建築費用や引っ越し費用をかける以上に相続税の節税になるのか
(3)素直に相続税を払ったほうが、手許に残る現金が多くなるのではないか
【相続税対策のデメリットを知る】
お客様は、銀行や不動産業者に相続税対策の相談をされたそうです。
このような業者さんに相談すると、自分の仕事になる話しかしてくれません。
(1)銀行
・リフォームや建て替え→融資ができる
・新しい住まいの建築→融資ができる
(2)不動産業者
・リフォームや建て替え→リフォームでは仕事にならないので、建て替えを勧める
・新しい住まいの建築→建築をすることができる
税理士長嶋がお話したような相続税対策のデメリットは、業者さんはまったく話してくれなかったそうです。
また、このような話をまったく聞いたことがなかったそうで「一度家族と相談してみる」とのことで、その日は帰られました。
もちろんのこと、デメリットを上回るメリット(相続税の節税ができる)があるようであれば、その対策を実行すべきだと思います。
しかしながら、デメリットも知らずに(知らされずに)相続税対策を行うことは危険なのではないでしょうか。
相続税の専門家と称する人たちが増えてきています。
誰が何を意図して提案をしてくるのか、十分に理解をする必要があるのではないでしょうか。