中小企業の事業承継について「歴史上から学びましょう」という面白い視点の書籍を読みましたのでご紹介します。
「武田家滅亡に学ぶ事業承継」 著者 北見 昌朗
テーマにされているのは、戦国時代の英雄「武田信玄」。
その息子の武田勝頼の時代に、この武田家は滅亡してしまいます。 「武田家が滅亡したのは武田勝頼に責任がある」というのが一般的な評価ですが、著者は「信玄公に7割、勝頼公に3割の責任がある」と分析しています。 戦国大名として英雄であった信玄公ですが、家督相続(中小企業の事業承継)については失格者であったということです。
武田家の滅亡は、後継者の育成・環境作り・権限委譲など不完全なものが多いのが原因であり、「家督相続は、継ぐ側よりも、継がせる側の方に問題がある場合が多い」 という分析です。 早くから家督相続を考えていた織田家や北条家は長らく繁栄を続けましたが、家督相続を考えなかった上杉家や武田家が短期間に衰退していったのは面白い歴史事実だと思います。 このように家督相続について、武田家とその他の有力大名である織田家・今川家・上杉家・北条家などと比較しているところは大変興味深いです。
また、本書の進行は「事業承継塾」としているところが面白いです。 中小企業の社長とその息子が、事業承継について勉強していきます。 この事業承継塾の講師は、武田家の筆頭家臣であった「山県昌景」が担当しています。 この「山県昌景」は信玄公・勝頼公に仕えていた家臣です。 両者の証言をする者としてこれほどの適任者はいないのではないかと思います。
この事業承継塾に持ち込まれる現代の事業承継(家督相続)の失敗事例と武田家の失敗事例が酷似しているところも興味深いです。
【家督相続(事業承継)は税金だけの問題ではありません】
本書は、家督相続についてのお話です。 現代の中小企業にしてみれば、会社をどう引き継ぐのか?というテーマです。 会社を引き継ぐということ、それは会社の株式を引き継ぐということを意味します。 会社の株式は「相続財産」ですので、もちろんのこと相続税という問題も出てきます。
ここで重要なのは、相続税は結果論のお話。 そもそも、会社として今後事業を安定して行っていけるのか?という問題が事業承継です。 相続税を心配されるのももちろんのことですが、まずは会社としての経営を安定させることができるのかを考えるのが先決だと思います。
この家督相続(事業承継)を円滑に行いましょうという法律が5月に成立しました。 ブログでもたびたび解説をしています「中小企業経営承継円滑化法」です。 今年・来年は家督相続・相続税について50年ぶりに大改正が行われます。
この50年ぶりの大改正の内容を見てみましても、事前に家督相続を行っておくことがこの便利な法律を利用できる条件となっています。 早くから家督相続を考えていた織田家や北条家のように長らく会社を繁栄させたいでしょうか? それとも、家督相続を考えなかった上杉家や武田家のように会社を短期間で衰退させたいでしょうか?
この50年ぶりの大改正は、家督相続について一考するまたとない機会だと思います。 それが、今年・来年なのではないかと思います。
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