認知症や知的障害・精神障害などで判断力が不十分な人や、親権者が死亡した未成年者の財産管理や生活上の契約などを代理する後見人による財産の着服が問題となっています。
毎日新聞 (2011年10月19日)
<後見制度>悪用10カ月で182件 最高裁調査
認知症高齢者や精神障害などで判断力が不十分な人の財産管理を代理する後見制度を悪用して親族が財産を着服するケースが、昨年6月~今年3月の10カ月間で182件に上ることが最高裁家庭局の初の調査で分かった。
被害総額は計約18億3000万円。
不正防止のため最高裁は、信託銀行への信託制度を活用した財産保護策を導入する方針だ。
後見制度の利用は00年のスタート以降、制度の浸透や高齢化の加速に伴い年々増加。
成年後見の申立件数は00年に5513件だったのが、10年には2万4905件に達し、家裁から後見人として選任された親族が財産を私物化し、預金を勝手に引き出すなどの不正も問題化してきたという。
全国の家裁は、財産管理が不安視される場合、弁護士や司法書士といった専門職を後見人に選任する運用を進めている。
だが、家裁が業務上横領容疑などで告発し、逮捕される悪質事例も増える傾向にあるため、さらなる防止策の必要性が内部で議論されてきた。
今回、最高裁が導入を決めたのが「後見制度支援信託制度」。
被後見人の財産のうち、日常使用しない分を信託銀行などに信託財産として預け、日常生活などに必要な額を預貯金の形で後見人が管理する仕組み。
後見人が信託財産から引き出すためには家裁の了承を必要とし、高額な支出を事前にチェックするという。
家庭局は「後見制度への信頼が揺らぎかねない中で、信託制度のような不正の事前防止策が重要だ」と説明している。
【石川淳一】
◇後見制度
00年に介護保険制度とともにスタート。
認知症や知的障害、精神障害などで判断力が不十分な人に対する成年後見と、親権者が死亡した未成年者に対する後見があり、財産管理や生活上の契約などを後見人が代理する。
成年後見には、親族や市町村長の申し立てで家裁が後見人を選任する「法定後見」と、本人が判断力が衰える将来に備え契約を結んでおく「任意後見」がある。
今年、愛知県で、後見人に選任された弁護士が被後見人の男性の定期預金を解約するなどして約1500万円を着服したとして逮捕される事件も起きた。
【後見人の仕事は財産を守ること】
後見人は、家庭裁判所から選任された親族や弁護士がなります。
後見人の本来の仕事は、判断力が不十分である社会的弱者の財産を守ることにあります。
あくまでも、後見人は財産の管理をすることが仕事であり、その財産は後見人自身のものではないことを十分に認識をすることが必要です。
【遺産相続の場面でも同じようなことが起こっています】
遺産相続の場面でも同じことが起こっています。
例えば、被相続人の預貯金の名義を変更することなく、相続人だからといって勝手に引出して個人的に使ってしまう方もおられます。
相続人の言い分では「親のお金を子供が使って何が悪い」というものが最も多いです。
親族が後見人になる場合、同じような考えを持ってしまうのではないでしょうか。
一方、弁護士が財産を着服し逮捕される事件も起こっています。
弁護士や司法書士などの職業専門家が後見人になる事例が多くなってきています。
これらの専門家が後見人になる場合、生活に苦しい専門家が財産管理という後見人の仕事をすると着服という事件が起こる可能性が高いのではないでしょうか。
【信託銀行を利用しても根本的な解決にはならない】
信託銀行に信託財産として預ける場合、当然のことながら信託報酬という経費が発生します。
信託銀行はボランティアではありませんので、一定額以上の財産しか受け入れないのではないでしょうか。
最高裁が検討している「後見制度支援信託制度」を利用しても根本的な解決にはならないような気がします。