平成22年12月16日に閣議決定された「平成23年度税制改正大綱」。
政局の混迷により、税制改正法案の年度内成立は困難な状況です。
そのため、平成23年度税制改正について、野党である自由民主党の考え方を把握しておくことも重要だと考えます。
自由民主党では、平成22年12月10日に「税制改正についての基本的考え方」を公表しておりますので、相続税や所得税など関連する部分のみご紹介したいと思います。
【平成23年度税制改正大綱との相違点:所得税・住民税】
自由民主党案では、所得税について、「役員のみに負担を押し付ける控除の見直しは税の公平等の観点から不適切な税制の変更は断じて許されるべきではない」と強く主張しています。
また、個人住民税の生命保険料控除は維持すべきと主張しています。
【平成23年度税制改正大綱との相違点:相続税】
自由民主党案では、相続税について、現行の死亡保険金等に係る相続税の非課税限度額については維持すべきと主張しています。
【第二 平成23年度税制改正についての重要課題】
1. 総論
税制改正は、中長期的な視野に立って整合的、計画的に対応すべきであり、マニフェストに掲げた歳出項目の実現にとらわれ、財源探しに終始するようなことがあってはならない。
併せて、現下の厳しいわが国の経済情勢にどう対応していくのか、どういった経済成長を目指していくのか、明確な戦略の下に進められるべきである。
わが党は、法人課税や地方税制等の重要な事項について、消費税を含む抜本改革の中で検討し、平成21年度の所得税法等改正法附則104条1項前段に定める道筋その他同条の趣旨に従って、2011年度までに多年度にわたる抜本的税制改革法案の具体的内容を明らかにすることとしている。
なお、政策税制、租税特ベル措置等については、昨年の「平成22年度税制改正に関する基本的考え方」でも示したように、補助金に劣らず有効な政策手段であり、一律的に「性悪説」をとることは適当ではない。
2. 各論
(1)個人所得課税
「控除から手当へ」との考えの下で創設された子ども手当の上積みの財源として、民主党政権が配偶者控除の所得制限や人的控除、給与所得控除の見直しを無原則に行うことは、子供手当てというバラマキ政策のツケを取り繕うための理念なき財源あさりと言う他ない。
個人所得課税については、本来、税制の抜本改革の一環として、所得税体系のあるべき姿という見地から、各種控除や税率構造を一体として見直すことが必要である。
各種控除については、格差の是正や所得再配分機能の回復の観点を踏まえ、時代に対応した人的控除制度へと見直すべきであるが、所得税・住民税は、その構造次第では、個人の価値観やライフスタイル、家族構成等を左右する。
特に、税制面において長年涵養されてきた家族の結び付き、絆を根本から揺るがしかねない。
さらに、
・所得の多寡によらず役員のみに負担を押し付ける控除の見直し
・組合費を特定支出控除の対象に追加する
等、税の公平等の観点から不適切な税制の変更は断じて許されるべきではない。
また、個人住民税の生命保険料控除廃止などは自助努力を抑制するものであり、適当ではない。
(3)資産課税
相続税・贈与税については、税本来の趣旨及び老後扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベースや税率構造等を見直し、負担の適正化を図る。
なお、現行の死亡保険金等に係る相続税の非課税限度額については、維持すべきである。
(5)具体的な政策税制等
〇 金融証券税制
上場株式等の譲渡益、配当金等に対する軽減措置(10%)は、経済を活性化し国民生活を豊かにするため、平成23年度までの時限措置として設けられた。
現下の経済・金融情勢を踏まえれば、軽減税率の廃止は、デフレ経済下で足踏みしているわが国の証券市場に水を差し、ひいては消費を減退させ、さらに景気を後退させかねない。
経済の持続的な成長を支える政策的な意義は大きく、軽減税率の延長が必要である。